声 明 文


「柔軟な権利制限規定」についての私たちの意見

 イノベーションを通じた新産業の創出のために、著作権法に「柔軟な権利制限規定」を設けるべきであるとの意見があります。しかし、コンテンツを利用する「新産業」の創出は、あくまで著作権者との協力関係によって実現されるべきです。権利制限規定によって著作権者に犠牲を強いても健全な「新産業」は生まれません。

 「柔軟な権利制限規定」を設けると、悪質な侵害行為も適法になったと誤解する「居直り侵害者」「思い込み侵害者」が増加すると予想されます。現在でもインターネット上などで多くの権利侵害が発生しており、その対策に著作権者は莫大なコストをかけています。懲罰的賠償制度などの法制度をもつ米国などとは異なり、わが国では、損害賠償請求などの訴訟で侵害対策コストを回収することは困難です。
 「居直り侵害者」「思い込み侵害者」が増加して非生産的な侵害対策コストがますます増大することは、日本のコンテンツ産業の弱体化につながります。コンテンツの再生産が阻害され、消費者の皆様に多様・優良なコンテンツを届けることができなくなるおそれもあります。また侵害対策コストがコンテンツの価格に転嫁される場合も有り、消費者の皆様に大きな負担を強いることにもなります。また、このような米国型の紛争解決制度を導入することは、コンテンツ産業のみならず、日本社会全体における紛争解決コストの拡大に繋がると思われます。

 私たちは、米国などとは異なる日本の法制度のもとでは、米国型の「柔軟な権利制限規定」を導入するのではなく、必要があれば的確で分かりやすい「個別の権利制限規定」をスピーディに立法し、さらに権利制限規定を適切に運用することで新たな時代に適応することが正しいと考えます。

2016年9月30日

一般社団法人日本映画製作者連盟 会  長 岡田 裕介
一般社団法人日本音楽事業者協会 会  長 堀  義貴
一般社団法人日本雑誌協会 理事長 鹿谷 史明
一般社団法人日本書籍出版協会 理事長 相賀 昌宏
一般社団法人日本新聞協会 会  長 白石興二郎
一般社団法人日本民間放送連盟 会  長 井上  弘
一般社団法人日本レコード協会 会  長 斉藤 正明
  (団体名50音順)
   

 

 

Copyrights © Motion Picture Producers Association of Japan, Inc.